
(タイトル『IGNITION』→、当時宣伝会議のタイトル決めで、俺は『IGNITION』と『IGNITER』、二通りのアイデアを出した。
自分で提案しておきながら俺と大石は『IGNITER』派だったが、ポールの反対とスタッフほぼ全員の意見で最終的にタイトルは『IGNITION』に決まった。)
今回ワーナーから再発されるSHM-CDサンプルが先週届いた。
試聴用サンプルなのでまだパッケージは無く、いわゆる白盤だ。
解像度の効果でいうと、合計6作品中、断然興味深かった『IGNITION』を先にチェックした途端、気持ちが覚醒した。
マスタリング時点の音質に限りなく近い、というかかなり忠実だ。これはすごいことだと思う。
音のレンジと分離の劣化がない為、とくにバンとジョーの正にマグナム的なリズム隊個性が如実にリアルだし、打ち込みブレイクビーツと生のドラミングの絶妙な絡み合い、それになんといっても俺には過去どの時期より素晴らしいと思える、ポールのヴォーカルテイクもさらに際立っている。
SHM-CD企画は本当に画期的だ。
再発されれば、持っているお気に入りのCDアルバム、全部ほしくなってしまうだろう。
従来では、マスター音源は量生産プレスされる時点で音質が劣化するのはやむを得なかった。
あらためて聴いているといろんなハードルがあったあのレコーディングの2年間を思い出す。
バンドの人間関係は今でこそ安泰なものだが、再結成したとはいえ、あの頃は微妙な確執も残っていた。それに加えポールに病の兆候が見えた時期でもあって、状況のあらゆる深刻さ加減が内容の随所にあらわれている。
もちろんいい意味での緊張感はこのアルバムの個性でもあるのだが。
当初、イグニションの評価は賛否両論に別れたようだ。
それもまたこのアルバムの存在感ゆえだと思いたい。
自分の考えでは如何にもバンド44マグナムらしい一枚でもあり、それまでの作品と比べての位置付けはともかく、作品スタイルとしては通るべき領域だった。
なにはともあれ、メンバーと大石の苦肉の策だったアルバム『IGNITION』を、今まさにそのリアルサウンドでリスナーに聴いてもらう事ができる、とここであらためて言っておこう。
10年後のイグニション。
当時アルバムジャケットで使った俺の左手は年月により確実に劣化したはずだが、サウンドの方は確実に甦ったといえる。
by 広瀬さとしJIMMY